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おなかのはらぺこ日記

好きなものには、基本贔屓目。

ジャニーズグループにおけるメンバー脱退と楽曲の親和性

「アイドル」には「ドラマ」が付き物である。山あり谷あり紆余曲折を経て生み出されるそのドラマこそが、それぞれのアイドルの魅力になり、特徴にもなるのだと思う。その中でアイドルとファンは登場人物となり、そのドラマによって生み出される楽曲たちはBGMとなって、そのドラマを細部まで彩る。アイドルのドラマティックさと楽曲の密度や熱量は、比例するように思う。

現在、日本では数え切れないほどのアイドルグループが活動している。元を辿れば他人である数人が、メンバーとして集められできたグループが、これだけの数活動していれば、すれ違いや方向性の違いなどから、メンバーが脱退してしまうグループが生まれるのは必然なのかも知れない。それは、昔から多くのグループを送り出してきたジャニーズも例外ではない。

また、アイドルは基本的にシンガーソングライターなどとは異なり、自分自身が作った訳ではない曲に、自らの感情や在り方を乗せて歌う。それはアイドル自身のセルフプロデュースだけではなく、アイドルを取り囲むスタッフたちのプロデュース能力も大きく問われる。何かアイドルにとってのイベントや事件があったとき、それを利用して楽曲に取り込むことは、アイドルとしてはある意味常套手段である*1。「メンバーの脱退」も、アイドルにとっての大きな事件の一つだろう。

今回はジャニーズグループの「メンバー脱退」と「楽曲」を関連付けて、少し考察したいと思う。今回挙げる曲は、メンバー脱退前最後、つまり新体制移行前最後の曲であると同時に、ほとんどの曲が世間には「脱退」の事実が伝わっていない頃に制作、リリースされた曲だ。しかし、それにも関わらず、「メンバー脱退」という事件との親和性が、非常に高くなっているのが興味深い。ちなみに、メンバーが脱退したグループ全てを取り上げている訳ではないので、ご了承ください。
以下、人名は敬称略。



「ジャニーズグループのメンバー脱退」と聞いて、真っ先に思い浮かぶグループはSMAPだろう。元メンバーの森且行オートレース選手になることを目指して、1996年5月いっぱいでSMAPを脱退し、事務所、そして芸能界からも退いた。CDデビューから約5年、人気絶頂での突然の脱退発表ということで、大きな波紋と脱退を惜しむ声が広がったが、その後森はオートレーサーとしてもきちんと活躍している。

1996年5月6日に、森とリーダー中居正広の2人きりで行われた森の脱退会見の前日、5月5日にリリースされた「はだかの王様〜シブトクつよく〜」が、6人体制のSMAPでの最後の曲になった。
以下は歌詞の抜粋である。


「シブトクつよく 明るくいきましょう」

「ずっと 未熟者でも ご容赦ください」

「態度はでかい でも気は小さかったりで
個人としては 結構いいヤツなんです」


歌詞を見てみると、「ずっと 未熟者でも ご容赦ください」と、森自身が新しい世界へと飛び込むにあたって、挨拶のように言っているようにも取れるし、「態度はでかい でも気は小さかったりで 個人としては 結構いいヤツなんです」と、残されたSMAPの5人が、これから様々な困難にぶつかるであろう森の背中を押し、送り出すようにも取れる。

また、SMAPはメンバー脱退から約20年経った今でも、日本のアイドルグループの頂点、そして芸能界のトップに「シブトクつよく」君臨し続けている。この歌は、メンバー脱退後も様々な金字塔を打ち立て、スーパースターとしての地位を確立していくSMAPからのある意味での宣戦布告の歌でもあったのかも知れない。*2


【Hey!Say!JUMPの場合「OVER」】

2007年11月14日に「Ultra Music Power」でデビューしたHey!Say!JUMP 。それから、約4年後の2011年6月27日、週刊誌で最年少メンバーである、当時16歳の森本龍太郎の未成年喫煙が報じられ、同時に森本の無期限活動休止が発表された。その発表から2日経った6月29日に、7枚目のシングル「OVER」がリリースされた。CDリリースの前にも、メンバー10人での音楽番組出演もあったし、CDジャケットやPVにも10人で写っていたが、その後のテレビ出演では9人での披露になっていた。

活動休止から約4年経った今も、森本はグループには復帰していない。最近では、ほぼ間違いなく森本自身と思われるTwitterのアカウントやYouTubeのチャンネルから、情報の発信や動画の投稿がされている。そのどれもが、ジャニーズ事務所では、所属タレントに禁止していることであり、森本が事務所自体を退所している可能性が強くなっている。つまり、森本は事実上のグループ脱退をしたことになる。
以下は歌詞の抜粋である。


「ピンチはチャンスなんだMy friend
フラついてんならStand by you」

「ボクラハ・イツデモ・デキナイ・コトナド・ヒトツモ・ナイノサ
そう、未来が待っている」

「俺はいつでも味方だから
with you」

「共に共に歩いていこう 共に共に歩んでいこう
共に共に歩いていこう 共に共に」


この歌で、彼らは「My friend」に向けて、何度も「ピンチはチャンスなんだ」と歌う。「いつでも味方だから」という歌詞も、「共に歩いていこう」という歌詞も、どれも「My friend」に向けたものだろう。自分にはこの「My friend」が、森本龍太郎を指しているように思えてならない。

そして、未来に対する希望と不安が混在する歌詞には、メンバー脱退に直面したアイドルとしてのHey!Say!JUMPというグループ、また一人の人間としての森本龍太郎と9人のメンバーが重なって見える。現実ではほとんどのメンバーの一人称が「俺」であるにも関わらず*3、歌詞の中では一人称が「俺」の歌はHey!Say!JUMPにはあまり無く、彼らにとってある意味等身大の歌であったのと同時に、新しい扉を開いた歌でもあったかも知れない。


KAT-TUNの場合「FACE to Face」】

KAT-TUNは2006年3月22日に、シングル、アルバム、DVDによる、異例のトリプルデビューを果たしたグループだ。デビュー前であるJr.時代にも関わらず、メンバーが出演したドラマのヒット*4や単独東京ドームコンサート開催などからも、驚異的な人気であったことが伺える。

しかし、それから約4年後の2010年7月16日に、メンバーの一人である赤西仁が脱退し、6人から5人での活動になった。またその約3年後の2013年10月9日には、田中聖も脱退、事務所との契約解除を発表した。「FACE to Face」は、田中聖の脱退の約5ヶ月前の5月15日にリリースされた曲である。そして、この曲が5人のKAT-TUNとしては、最後のシングルになった。
以下は歌詞の抜粋である。


「ありのまま あるがまま 背負うDestiny 叫び続けて
飾らない裸のMy heart 壊れるまで
そう 見つめ合い 認め合い 信じ合える
戻れない 止まれない 夜が来ても… オワラナイStory」

「出逢いを知り 手にした温もり 本当の自分に立ち向かうNight & Day
Ah 夢じゃなく 嘘じゃなく この姿を
感じている もがいている 俺という「現実(いま)」貫くために」

「ありのまま あるがまま すべてHistory 刻み続けて
何度でもリアルなMy heart 潰れるまで
そう ぶつけ合い 愛し合い 信じ合える
戻らない 止まらない 今日も明日も… ナクサナイFeeling」


下のツイートは、最近Twitterで話題になっていたブログ記事なのだが、KAT-TUNが歌う楽曲の歌詞の中での頻出単語の一つが「今」ということで、KAT-TUNは「今」を歌うアイドルだと例えられている。デビュー当時から、独特かつジャニーズらしからぬ雰囲気で、数多くあるジャニーズグループの中でも、異彩を放っていたKAT-TUNは、ある意味で自由奔放*5であり、どのグループよりも等身大に近く、自らの「今」を歌っているグループなのかも知れない。そういう点で見ると、あらゆるバックグラウンドと歌とを結び付けて考えやすいように思う。

また、この歌の中で、何度か「リアル」という単語が出てくることや、タイトルに「FACE」という単語が使われたりしていることから、KAT-TUNのデビュー曲である「Real Face」も思い起こさせる。そのことも、この歌にある種の運命的な何かを感じると同時に、彼らはデビュー曲からずっと「リアルな今」を歌い続けていたのだとも感じた。


【NEWSの場合「Fighting Man」】

2003年11月7日にデビューしたNEWSは、同年12月に森内貴寛、2006年12月に内博貴と草野博紀が脱退し、グループとしても活動休止を余儀なくされるなど、紆余曲折を経てきたグループである。当初9人でデビューした彼らは、いつしか6人で活動するようになっていた。

そして2011年10月7日、ソロ活動に専念するため山下智久、NEWSと関ジャニ∞の並行した活動が困難になったため錦戸亮が、二人同時に脱退を発表した。その約1年前にリリースされていたのが、6人体制のNEWSでは最後の楽曲となる「Fighting Man」だった。
以下は歌詞の抜粋である。


「簡単に出来たんじゃ 何にも意味なんてない
トレースした人生は No good
散々な状況に 何回もブツかんなきゃ
答えなんか見つかりゃしない」

感慨なんかにふけって 後悔なんてしないで
前方だけ見て進めばいいさ
断トツなスピードで 間違いじゃない情熱抱いて
ガムシャラにいけ」

Don't look back Don't look back
時は止まらないから
Don't give up Don't give up
覚悟キメていこうぜ」

Don't be wet! Get a grip
踏み出したなら もう 最上級の Fighting Man
今日から We are Fighting Men」


NEWSの二枚看板的存在だった山下と錦戸が抜け、4人での再出発を目指し、もがき苦しみ、戦い抜くこととなる、新生NEWSに、怖いくらい似合うこの曲が6人のNEWSでは最後の曲となったのは、とても偶然とは呼び難く、必然的なことに思えてならない。デビューしてから、メンバー脱退や活動休止など、様々な壁にぶつかってきた6人で歌うからこそ、元々でも十分すぎるほど説得力があったこの曲を、新たに4人で歌うことで、6人で歌っていた時とはまた別の意味合いが、この曲にもたらされたことは言うまでもないだろう。

NEWSから2人が抜けた後、小山、手越、加藤、増田の四人は「イチゴの無いショートケーキ」などと揶揄され、NEWS消滅の危機にも立たされた。しかし、これからもNEWSを続けていこうと、4人はそれぞれに小説家*6やキャスター、バラエティーなど、様々なことに挑戦し、グループを守っている。山下と錦戸も、それぞれの居場所で、それまで以上の活躍を見せている。この曲は、山下と錦戸の2人、そして4人となったNEWSにとって、一種の決意表明であり、覚悟の歌だったのかも知れない。個人的には、NEWSが4人体制になって、初めてのコンサートで歌われた4人の「Fighting Man」がすごく感慨深くて、印象に残っている。


ジャニーズグループのメンバー脱退は唐突にやってくる。事前の発表は無いし、脱退するメンバーを送り出すようなイベントも開催されない。その残酷なまでの潔さは、数多あるアイドルグループのなかでも、ジャニーズの特有なものなのだと思う。

その潔さにはジャニーズが、卒業という制度がある女性グループなどとは異なり、よほどの理由が無い限りグループから抜けることがないということが関係しているように思うし、「芸能界」という世界に生を受けながらも、誰にも知られないまま、スポットライトも浴びることなく、ひっそりと芸能界を去っていく者を目の当たりにする「ジャニーズJr.」という時代を、誰もが一度は通り過ぎてからデビューに至っているという事実も大きく関係しているのかも知れない。

脱退によるイベントが無いとなれば、勿論いわゆる卒業ソングとなるものも、グループを去る者には贈られない。だからか、ジャニーズのファンはいかなるときも、好きなアイドルグループのバックグラウンドと照らし合わせながら、メンバーの一挙手一投足に目を凝らし、歌詞の一文字一文字をも読み解いている。それは、今イヤフォンから流れている歌、テレビで歌い踊る歌が、もしかしたら自分の好きなアイドル、ひいては好きなアイドルグループにとって、最後の歌にもなるかも知れないという儚さや危うさを孕んでいるからなのだろう。そんな儚さや危うさと背中合わせにありながらも、ファンはアイドルを応援し、時にアイドルと共に一喜一憂する。それは、アイドルにしか持ち得ない輝きや魅力の裏に潜んでいる、儚さや危うさに魅せられた人間の宿命なのかも知れない。

今回は「メンバー脱退」という、どちらかというとマイナスなイメージの強い出来事と、それぞれのグループの楽曲を結び付けて考えてみたが、「デビュー何周年」や「メンバーとの絆」など、比較的明るいイメージの事柄との関連性が強い楽曲も沢山あるので、考察してみると面白いかも知れない。

*1:例えば、AKB48の最新シングルの「僕たちは戦わない」というタイトルは、ファン投票によってセンターを目指して争う選抜総選挙を意識したものに間違いないだろう。こういう風にイベントや出来事を、楽曲に取り込むのは、どちらかというと女性アイドルが多いイメージ。

*2:はだかの王様」がリリースされた1996年は、その後「青いイナズマ」「SHAKE」というように、5人のSMAPとして重要な2曲が発表された年でもある。

*3:知念くんは「僕」が一人称。

*4:デビューの前年である2005年に、亀梨和也赤西仁が出演した「ごくせん」が、平均視聴率25%を超えるヒットを記録した。

*5:デビュー当時、用意されている衣装に、自分たちの私物を加えて付けて、出演したこともあるという逸話も残っている。

*6:加藤シゲアキは、今年6月1日に初の短編小説集「傘をもたない蟻たちは」を発売。また、デビュー作「ピンクとグレー」は、来年1月にHey!Say!JUMPの中島裕翔主演の映画として公開予定。